たった一言でも

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たった一言でも

「翔太には正直、がっかりだよ」 学校の校舎裏。 低く重たい声で、拓海は僕にそう言った。 不機嫌な気持ちを隠さず、僕は拓海を睨んだ。 「翔太はさ。自分のことしか考えられないんだな」 言い返したいことはあった。 だけど言うことはできなかった。 普段ニコニコしている拓海が本気で真顔になると、一種の危機感を感じる。 僕はぎゅっと唇を噛む。 「翔太の態度で傷付く菜々美ちゃんの気持ちを、考えたことがあるのか?」 拓海がわざわざ僕を呼び出した本題は予想がついていた。 だけど改めてその名前を出されると、何もかもを放棄したくなる。 何も考えたくない。 拓海の前から逃げ出そうと足を一歩後ろに下がろうとしたとき、「翔太!」と拓海の怒りの混じった声に、身体は引き止められた。 「翔太の心には悪魔が住んでる。だから菜々美ちゃんを傷付けるんだろう?」
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