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黄色い砂の上にしゃがみ込み、土をひとつまみ摘んで指先をこすると、細かい粒の粒子がさらさらと指からこぼれた。まるで公園の砂のようだ。栄養もなんもありゃしねぇ。
「え~っと、土を肥やすには肥料だな。なら園芸の項目にあったあれを使ってみるか」
そう思った途端、俺の目の前か淡く光り、縦長の四角い形になると、一冊の本となった。
「確か百九十ページだな」
パラパラとページがめくれ、該当ページへとたどり着く。
図書館で亡くなったせいだろうか。俺の中には向こうの世界のありとあらゆる知識が眠っていた。頭の中だけで思い浮かべることも出来るんだが、こうやって視覚化したほうが使いやすいからそうしている。
もちろん魔王なんだから、やりたい放題の力はある。チートを使えば、あっという間にこの土地を肥えさせることも出来ると思うけど、使いすぎると世界のバランスが崩れて、どこかに余波が出るっぽぃので、なるべく使わない方向で頑張っている。責任取れとか言ってくるところはないだろうけど、小市民なのです。チキンハートなの。解って!
「おーい、リトぉ!!」
村の方向から俺を呼ぶ声がしたので振り返ると、こっちの世界の育ての親のじいちゃんが、手を振っていた。
「どうした!?」
「シュマんとこの畑ちっと頼めねぇかとよ!!」
「解った! 今行くよ!!」
「ワンっ!」
じいちゃんに着いてきていたらしい、ふさふさした毛並みの大型犬が俺に飛びついてきた。避けきれなくて胸元に体当たりされて、身体がよろめく。それなりに鍛えてるから、なんとか堪えたけどね。
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