例えばさよならを言うことが

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はしゃぐミリを横目に、石垣は暫く店の入り口の方をなんとなく眺めていた。 好きなだけ購入すると、頭を下げる店員を背景に、ミリは満足げに店を出、直ぐに石垣の腕に自分の腕を絡ませる。 「ミリ……」 歩き出す彼女に、石垣がいい加減にしろと言い掛けるが。 「ここはもう終わりだから。次の場所に移動しましょ?」 被せてくるミリに、結局石垣は溜め息を吐くに止(とど)めた。 虎井の案内の下、エレベーターが一階に着き、二人が梟王から出ようとした時だった。 ちょうど、虎井が出入り口に立ち、遠巻きに人垣が出来て、それに石垣が背を向け、まさに出ていく直前。 石垣が立ち止まり、ミリが怪訝な顔で振り返る。 腕を引くミリに構わず、石垣が振り返った。 どうしてなのか、と訊かれたら、なんとなくだったとしか答えられないのだが。 兎にも角にも、彼はそこで振り返り、こちらを見つめる群衆の中にーその後方に、沙耶を見つけた。 驚いた顔をして、こちらを見ている。 「沙耶……」 石垣が呟くと、固まっていた沙耶は弾かれたように身体を捩らせて、あっという間に人々の中に紛れ、見えなくなる。
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