例えばさよならを言うことが

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衝撃で車体が揺れた。 「停めろ。」 石垣はもうミリを見ておらず、運転手に指示をする。 「は……い」 掠れ声でなんとか返事をして、運転手は車を路肩に寄せる。 「随分と……ご執心なのね。」 わずかに震えているミリだが、強気な発言は変わらない。 「あの子は、貴方とは釣り合わないわ。それにあの子は貴方のこと、なんとも思ってないみたいよ。」 ドアに手を掛けて、車を降りようとしていた石垣が、忌々しげに振り返る。 「お前に何が分かる」 「……少なくとも、梟王と天秤にかけた時、貴方は勝てなかったみたいよ?」 石垣の目が一瞬見開き、ミリは心の中で舌を出す。 が。 「ーは。そりゃそうだろ。」 ミリが何をしでかしたか、僅かに見えた石垣は不敵に笑う。 「何がおかしいのよ。」 苛立ちを露わにしたミリを、もう視界に入れることなく、石垣は車から降りた。 「お前には分かんないよ。一生。」
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