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取引相手だからーーしかも格上。
父がミリに取り合わない理由(ワケ)が分かった。
子供ながらに屈辱の上に屈辱を塗りたくられた気持ちになった。
しかし、二度と会うことはないと思っていた矢先。
転入生として教室で紹介された時は、夢であれと何度も願った。
しかし現実とは残酷なもので、目の前にいる彼が、石垣諒と名乗り、願いは瞬時に儚く散った。
しかしこれは復讐のチャンスかもしれない。
ポジティブ思考の持ち主のミリは、自力で先日の反撃を試みる。
『私はブスじゃないわ。』
諒が指定された席に向かう途中、すれ違い様に日本語でわざわざ言ってやった。
が、諒はチラともこちらを見ずに、平然と席に着く。
まるで聞こえていないかの様に。
この土地で、母語の日本語が聞こえてくるなんて珍しかった筈だ。
ーー絶対聞こえたはず!
無視をしたことはあってもされたことはなかったミリは、赤くなるのを通り越して、青い顔で、諒を睨みつける。
が。
ミリの射る様な視線すら、何の効果も彼にもたらさなかった。
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