例えばさよならを言うことが

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ミリの運転手が、主人が動き出すにはまだ時間が掛かるなと、フロントガラス越しに空を仰いだ頃。 その空から降る雨が、先程より強さを増して、走る石垣を濡らしていた。 すれ違う人間が何事かと振り返る中、脇目も振らずに進む石垣。 やがて、今は坂月に任せたミュアンの本社脇を通り過ぎ、暫くして今度はふと鼻を掠める珈琲の香り。 以前沙耶に頼んだ朝食リストの中のひとつ。 コクスィネルコリーヌの数メートル手前で、石垣の足が突然止まる。 その視線の先ーー。 雨が降っているにも関わらず、外までできている行列から、少し外れた店の端の軒下で、向かい合っている二人がいた。 一人は梟王の制服を着ており、一人はいつも通り、品の良いスーツを着こなしている。 ちょうど二人は今来た所で、お互い会ったばかりのようだった。 沙耶は少し浮かない顔をして、畳んだ傘に時折視線を落とす。 そんな彼女に、坂月は何か言葉をかけた後、店の中に入るよう勧めているようだった。
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