例えばあの時の出逢いが

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駿のお弁当を作るでもなく、バタバタ忙しい朝から解かれて、沙耶はここずっと、静かな朝を過ごしている。 自分のために朝から何かを作る気にはなれず、昨日の夕飯の残りを温めてつつく程度だ。 最初の1ヶ月は瞬く間に流れ、2ヶ月目に突入し、忙しいところに回される梟王の、というか、あの3人の沙耶への対応にも慣れてきた。 洗濯して、掃除していたら、そろそろ出る時間になり、沙耶は鞄を手にして、春物のコートを羽織り、家を出た。 天気予報では花粉情報が関東を真っ赤に染めていて、風が強いせいか、花粉症ではない沙耶も、流石に目に砂や花粉が入ってくるのを避けるために顔をコートの襟で守るようにして歩く。 「今日は目にゴミ、入らなかったですか?」 梟王に着くと、エレベーターの前で朝比奈と出くわし、沙耶は固まった。
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