例えばあの時の出逢いが

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カデンテのあるフロアで、朝比奈は沙耶の先を行くが、ここ4階はプレステージ。ハイブランドばかりが立ち並ぶ。 どこぞの島の王妃様も、あそこの国の王女様も身に付けているというジュエリーショップは、最早客がいるのか疑わしい程の値段だ。 故に、本館から新館への通路を使用する客以外はあまり人通りはない。 ショーケースの前に立つ従業員はさぞかし暇なのではないか、と沙耶は思っていた。 そんな従業員達は、朝比奈が通ると会釈していく。 彼は、見た目こそ小動物のようだし、口調も柔らかだが、仕事の仕方は至って正確でそつがなく、そういう意味では、従業員の中で榊原ジュニアと囁かれていた。 言葉を交わすことのないまま、後ろを付いて行くと、通路がある方向とは真逆で、誰も寄りつかない例のジュエリーショップの裏に、沙耶も知らなかった鉄扉があり、朝比奈はその前で立ち止まった。 非常口のようだが、立ち入り禁止のプレートが掛けられている。
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