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『君は下っ端なんかじゃないよ。』
ーいや、そこ引っ掛かる所じゃないんだけど。
朝比奈がそう心の中で突っ込みを入れてしまう程、木本は強めに否定した。
『でもそうかー……ま、無理にとは言わないよ。でももし……もし本当に一人っきりになりたいんだったら、良い場所教えてあげるからね。』
『……はい。』
色々粘った割に、一気に引いていく木本に、調子を狂わされながら、とりあえずは助かったと朝比奈は胸を撫で下ろした。
彼がいなくなり、パソコンと向き合いながら。
【もし本当に一人っきりになりたいんだったら】
木本の放った言葉が、何故か残って消えない。
彼は自分を食事に誘ったのではなかったか。
それがなぜ、去り際の台詞がこれなのだ。
食事は1人派とは確かに言った。そしてそれは嘘ではない。
でも木本の言い方だと、食事とはもう切り離されていたような。
まるで。
まるで、この梟王という城の中から、出て行きたいと思っている事が、見透かされているようなーーー
マウスをクリックする手を止めて、朝比奈は思わず木本の消えた方向に目をやった。
『いや……まさか。』
ー流石に考え過ぎか。
あんな空気も読めないおじさんに、そんなこと、分かる筈がない。
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