例えばあの時の出逢いが

14/31
前へ
/269ページ
次へ
変なおじさんー木本を見る目が変わったのは、それから数週間経った頃。 梟王のレジェンドとも言われる北島に用事があって探していた時の事だった。 『あ、北島さん……』 遠くに居る北島を見つけ、呼びかけて、はたと気付く。 柱の陰に隠れて見えないが、誰かと立ち話をしているようだ。 北島はこちらに背を向けている。 まだ開店前。相手は客ではない。が、世間話のようにも見えなかった為、邪魔をしてはいけないと思い、少しだけ距離を縮め、待つことにした。 ーあ。 近付くに連れ、見えてきた相手に朝比奈は驚く。 柱の陰にいたのは、木本だったのだ。 そしてその木本はいち早く朝比奈に気付いた。 『おはよう、朝比奈くん。』 木本の視線を辿った北島も、直ぐにこちらに振り返る。 『おはよう、ございます。』 あの一件からぶりの木本に、ぎこちなく挨拶を返す。 『北島さんに用事かな?じゃ、僕はこれで失礼します。ではまた。』 木本はにこりと微笑むと、踵を返して、朝比奈とは反対方向へと去っていった。 『お知り合い、ですか?』 『ーーえ?』 レジェンドとも呼ばれているだけあって、北島は勿論旧組。北島もどことなく木本に似た雰囲気を持つ、穏やかな人物ではあるが、年齢的には木本より年上だ。以前からの知り合いか何かだろうか。 そんなことを考えていたせいか、うっかり疑問が口から溢れてしまっていた。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

654人が本棚に入れています
本棚に追加