例えばあの時の出逢いが

16/31
前へ
/269ページ
次へ
北島とのやりとりを境に、朝比奈はただのおじさん改め、謎のおじさん木本が何者なのかを探ることにした。 レジェンドの有無を言わせない圧力もあり、露骨に避けるのも止めようと心に決めた。 しかしーー。 木本とはそもそも違う立場、違う仕事。鉢合わせること自体が珍しいのだ。 意識し始めた所で、そう都合よく会えるものでもなかった。 ーーだとすると。 社食に誘われた時は偶然でも何でもなく、意図的に、木本は朝比奈目掛けてやってきたのだ。 一体何の理由があって? 今となっては分からないが、聞いておけば良かったと軽く後悔する。 『朝比奈、聞いてるか?』 名前を突然呼ばれてハッと顔を上げると、先輩である瀬能が少し苛立ったようにこちらを見ていた。 『あ、はい!すみません。』 『頼むよ、大事な所なんだから。』 大きなイベントの為にミーティングが開かれていて、今日は取引先と擦り合わせた結果が、梟王関係者に共有されている所だった。 『ビルジョイエ側からの要望で、会場はこのように設置して欲しいとのことでした。』 指示も細部まで画像付きで説明され、力の入り具合が伝わってくる。 瀬能が何度も取引先と話し合いを重ね、実現した催事だった。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

654人が本棚に入れています
本棚に追加