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『あ……すいません……でも、僕、直ぐに行かないといけなくて…』
閉店後からの設営だった為、フロアに客の気配は消えている。
『朝比奈君、落ち着いて。何があったの?』
この人に話した所で何になるというのだろう。
関係者ですらない。一刻も早く何とかしないといけない。
『いやそんな時間はーーーー』
言いかけた所で、なぜか冷静な声の、北島の忠告が蘇る。
【彼を侮らない方が良い】
『っ……、えっと…。明日、ビルジョイエの新作発表と先行販売記念イベントがあります。それでーーー』
半ばヤケクソだった。どうにでもなれと思った。
説明していくにつれ、落ち着きを取り戻してくると、なんとかなんてならないだろう。と自分に突っ込んだ。
こんな時間から取引先に謝罪に行くなんて無理難題だし、会ってくれたとしても、許してくれるわけがない。かといって、解決策は何もないし、瀬能がこれからどうするのかも分からないが、朝比奈が責任を取らされるようだという事だけは、はっきりしている。
『ふーん。やっぱり、瀬能君、やっちゃったかー』
緊迫した報告だったと思うが、木本はのんびりした口調でそう言った。
しかも、朝比奈は事の経緯は説明したものの、瀬能が自分のせいにしたとか、個人的な意見は言わなかったのに、だ。
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