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「違います。僕はただ、梟王の為に、貴女が犠牲になる必要はないと言っているんです。貴女は僕を関係がないと言いましたが、あなたこそ、そもそも梟王に関係のない人間なんです。」
朝比奈の言葉に、違う所が今度は痛み出す。
手は氷のように冷たい。
ー関係のない人間。
「………そう、ですよね。確かに。」
「秋元さん?」
俯いた沙耶を、朝比奈がやや心配そうに覗き込む。
「私には、関係のない場所、でした。恐らくこういう状況にならなければ、一生私の人生と、交わることなど、なかったと思っています。」
梟王など、自分の生活には、関係のない場所。
石垣から買い物を頼まれた時に、生まれて初めて足を踏み入れた位の。
それなのに、天地がひっくり返るほどのどんでん返しがあって、関わらざるを得なくなった。
「最初は、与えてもらったものを、何も知らないまま、手放すのは、違うと思って……でも……」
でも最近、それが理由ではない事に気付くようになっていた。
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