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朝比奈を置いて、沙耶は早足で来た道を戻る。
ーーばか。何で泣いたの。
今更ながら後悔の念が押し寄せる。いくら感傷的になっていたからと言って、朝比奈の前で泣くなんて。そしてその理由を知られて、今の様に言われてしまう。要するに、無理をするな、お前は梟王には相応しくないと。
そりゃそうだ。社長になろうとも思っている人間がこんなにひ弱でどうする。
ーーもう、駄目かもしれない。
鉄扉の前で、沙耶は立ち止まった。
何をどうすれば、あの人たちに認めてもらえるのか分からない。
ただがむしゃらに毎日をこなしているだけでは、何の手応えも感じはしない。
なんなら、今の朝比奈の発言で、振り出しに戻った。
「弱気になっちゃ駄目。」
自分を落ち着かせる為に深呼吸してから、こんなんじゃ駄目だと気合を入れる様に、頬を叩く。それから扉に手を掛けた。
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