三章

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 一階から二階への階段は、ふきぬけのエントランスホールをつなぐ半円形のものだ。豪華な手すりが装飾的である。パーティーのときなど、家族がそこから登場してくれば、華やかな印象を演出できる。  二階の踊り場はろうかへと続く。  構造上、二階から上の階段は、そこには造れなかったらしい。エントランスからの階段は、二階で終わっていた。 「ここが、わたしの部屋ですよ」  二階にあがってが、クロウディアの部屋だ。ろうかをはさんで向かいが、サイモンとフローラの部屋。 「では、わたくしはここで。おやすみなさい。伯母さま」  メイベルがろうかの奥へ歩いていきかける。  ワレスは呼びとめた。 「待ってください。せっかく、こうして関係者がそろっているんだ。事件の夜を再現してもらえませんか?」  メイベルは伯母の顔を見る。  クロウディアがうなずいた。 「今、カギを持ってきますよ」  クロウディアはサイモンの手をかりて、室内へ入っていく。奥の続き間へ、いったん消えた。伯爵家の人々の部屋は、どれも二間か、それ以上の続き部屋だ。 「これがレオンの部屋のカギです。以前はレオンが自分で持っていましたが、あのことがあってから、わたくしが保管しておりました」 「伯爵はつね日ごろ、自室にカギをかけていたのですか?」 「そうです。あの子は事故のあと、家族にも心をゆるさなくなっていましたのでね」  ところが、事件の夜はそのカギがあいていた。
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