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「事件の日、カギはどこに?」
「居間のチェストの引き出しのなかですよ。このカギはとうぶん、あなたが持っていてくださいな。そのほうが調べるのに都合がよいでしょうから」
クロウディアからカギを受けとって、ワレスはふところに入れた。
それを見て、サイモンが口をひらく。
「じゃあ、フローラは部屋に帰っておいで。あの日も僕はフローラを部屋に待たせて、一人でろうかへ出ました。だから、かまいませんよね?」
妹に血なまぐさい話を聞かせたくないのだろう。
ワレスは承諾した。
「では、まず、部屋の近い伯母上とサイモンに聞きます。あなたたち二人のうち、どちらがさきに、ろうかへ出ましたか?」
片方は目の不自由な老人だ。とうぜん、サイモンが手をあげる。
「悲鳴を聞いて目がさめたので、フローラを落ちつかせてから外へ出ました。
すると、大伯母さまの部屋から音が聞こえました。僕は大伯母さまがぐあいを悪くしたのかと思い、向かいの部屋にかけこみました。伯爵以外は、誰も部屋にカギをかけません。ドアはいつもどおり、かんたんにあきました。
僕が部屋に入ったとき、大伯母さまは夜着の上に肩掛けをまとうところでした。『大伯母さま、大丈夫ですか、どうかなさいましたか』と、たずねると、『いいえ。わたしじゃありません。上の階から聞こえたようです』とおっしゃいました。それで二人で、ようすを見にいこうということになったのです」
「なるほど。そのあと、二人でろうかへ出たんですね?」
ワレスがうながすと、サイモンは大伯母の手をとり、奥へ向かって歩きだした。途中でひとつドアの前をすぎる。
「ここは?」
クロウディアが答える。
「以前、この子たちの父が使っていた部屋ですよ。今は空き部屋になっています」
「カギはかかっていますか?」
「いいえ。いまわしいことのあった部屋というわけではありませんのでね。掃除もさせなければなりませんし」
「あとで拝見させてもらいましょう」
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