大して親しくない大学の同期

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

大して親しくない大学の同期

大して親しくない知人が死んだ。 悲しくないのは僕が冷たい人間だからだろうか? 確かあいつとは、大学のときに飲み会で会ったんだと思う。 同じゼミのやつが入ってるサークルの主宰する、結構大人数が参加するコンパだった。 隣の席になって、少し話して、LINEを交換したんだ。 その後、大学の構内では何度か顔をあわせて、挨拶もしたし世間話もした。 飲み会に来ていたこともある。 嫌いではないが、そこまで接点がないし、共通の話題もない。 そういう相手を大学の連中は「友達」と呼んでいたけど、少なくとも僕の方から友情というやつを感じたことはない。相手はどうだか知らないけれど。 だから卒業後しばらくして、道端でばったり出会ったときにも特になんの感慨もわかなかった。 「久しぶり! 元気にしてる?」 実際のところ、元気だったかどうかなんて興味はないだろう。 それでもそんな時には、一緒に飯を喰いに出かけたりもするものらしい。 安い中華料理屋でハイボールを飲んで、餃子を突きながら学生時代の思い出を語る。 あの教授が、あのサークルが、あの友達が―― 話題を探しながら喰う飯が、美味いはずはない。 そんな、その程度の相手だ。 そんな知人が、死んだ。 後頭部を殴って気絶させた後、首を切られ、手足をバラバラに切断されて。 僕の部屋の冷蔵庫に今、入っている。 指の肉を煮てみたが、あまり美味くはなかった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!