113人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
本当にやれやれだ。
雨に濡れた黒猫なんざ拾うんじゃなかった。
黒猫は一説によると幸運を呼ぶと聞いていたがとんだ疫病神だ。
俺は大きな溜め息を吐き出した。
「友利、咲良。よく聞け。本当に俺と雛人は何もしていない。・・・痕は付け合ったがそれ以上のことは本当に何もしていない」
俺のその言葉に友利も咲良も何の反応も返さなかった。
まあ、お互いに『返さなかった』と言うよりは『返せれなかった』の方がこの場合、正解だろうが・・・。
「友利先輩。要さんの言う通りですよ? 本当に何もありませんから」
そう言ってクスクスと笑う雛人に友利はチラリとだけ目を向けた。
ん?
なんだ?
俺は友利の首筋に付いた痕に目を細めた。
友利と咲良は今日、ずっと一緒に居たのか?
俺はそろそろと咲良の首筋へと目を向けた。
ビンゴか・・・。
「・・・咲良」
俺はいつもよりだいぶ低い声で咲良を呼びつけた。
それに咲良はビクリと震えた。
最初のコメントを投稿しよう!