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「要さん・・・」
そう俺の名前を呼んだ雛人の声はいつも以上に落ち着いていた。
「・・・なんだ?」
俺は未だ俺の首筋を執拗に舐めてきている雛人をそのままに訊ねみた。
やっぱり・・・慣れてるな・・・。
俺は首筋から伝わってくる雛人のその舌の動きに神経を集中させつつ、そんなことを心の内で呟いた。
『最上 雛人って知ってるか?』
誰だったかそんなことを俺に訊ねてきたヤツがいた。
それは確か入学式がさあ始まろうかと言う時だった。
『最上 雛人』
入学式前日からその名前を俺はちらほらと耳にしていた。
だが、俺はその人物に対してとんと興味がなかった。
なのに勝手に耳に入ってくるその無駄な情報に俺は半ばげんなりしていた。
最上 雛人のその容姿は男でありながら優麗で成績は優秀。
そして、スポーツは万能だと耳にした。
まあ、それくらいならよく耳にする秀才だ。
特別にざわつくことでもない。
なのに最上 雛人のその噂話は他を逸していた。
それは最上 雛人が歪な人物として捉えられているが故だった・・・。
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