猫のような蛇のような狼のような

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猫のような蛇のような狼のような

「要さんって案外・・・優しいんですね」 そいつは人んちの風呂場から出て来るなりそう言ってクスリと笑った。 まずは礼を言えよ・・・。 俺はその言葉を呑み込み、溜め息混じりに『まぁな』と答えるに止めた。 それにまたそいつはクスクスと笑いだした。 本当に・・・コイツは・・・。 「ありがとうございます。拾ってもらえて助かりました」 そいつはそう言うと俺に軽く頭を下げ、首に掛けていたタオルで未だ濡れて湿っている真っ黒な黒髪を撫でて乾かしだした。 「この大雨の中、朝っぱらから何してたんだ? 傘も指さずに・・・」 俺はそう言ってソファーに腰掛け、少し湿っている朝刊を開き、そこに並べられた文字に目を通していった。 ◯◯県で刺殺事件。一家全員死亡・・・。 ◯◯市でひき逃げ。男性死亡・・・。 高校教師、生徒を暴行し逮捕・・・。 このところ世の中は暗いニュースばかりだ。 「また殺人事件ですか? 嫌ですね~」 「・・・おい。離れろ」 俺は朝刊に目を向けたまま後ろから抱きついてきた最上 雛人(もがみ ひなと)にそう声を掛けた。 それを雛人はクスクスと笑っただけだった。
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