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「・・・わかった。もう好きにしろ」
俺はそう言って雛人を置いたまま自室を出てリビングへと戻り、テレビを点けた。
テレビはちょうど○○県で起きた一家全員刺殺事件の放送をはじめたところだった。
俺はそのニュースに耳を傾けながら読みかけだった朝刊の文面へと目を通していった。
本当にこのところ世の中は暗いニュースばかりだ。
殺人事件に死亡事故。
暴行事件に自然災害・・・。
「・・・パンダ?」
そう呟いた俺の視線の先には朝刊の隅に細々と掲載されたパンダの写真・・・。
そのパンダは片手に笹を持ち、もう片方の手には子パンダを大事そうに抱えていた。
『要さん! パンダ! パンダが生まれましたよ!』
咲良がそう嬉しそうに早朝から電話を掛けてきたのは確か・・・二週間ほど前のことだっただろうか?
咲良のその電話で俺は起こされた。
その日の前日・・・と言うよりはその日の夜明け前まで俺はレポートを仕上げるため起きていた。
ようやく寝付けたかと思ったら咲良からの電話・・・。
相手が咲良でなければ確実に俺はキレていた。
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