猫のような蛇のような狼のような

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「何です? 要さん。まさか照れてます? 俺に抱きしめられて」 照れる? 馬鹿言うな。 俺は読みかけの朝刊を閉じ、大きな溜め息を吐き出した。 それに雛人はまたクスクスと笑いだし、俺の首元にその小さな顔を埋め、なんでもないキスを俺の首筋に繰り返した。 『最上 雛人はヤバい』 俺は咲良にそう言ったことがある。 俺がそう言うと咲良は合点がいかないと言う表情をしていた。 『雛人はそんなに悪いヤツじゃないですよ? 意地悪ですけど』 咲良はそう言うとへにゃっと笑っただけだった。 雛人が悪いヤツじゃないことは俺だって知っている。 知っているが『最上 雛人はヤバい』。 それはいつも雛人がクスクス笑っているからとか授業をよくサボっているからとかではない。 俺が雛人を『ヤバい』と感じるのは人間の動物としての勘に近い何かだ。 例えば野生の獰猛な肉食獣に出会してそれをヤバいと感じるのと同じように・・・。
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