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猫とサクラ
カタリ・・・。
物音が聞こえた。
俺はその物音で目を覚まし、うっすらと目を開けた。
目を開け、はじめに目にしたものは穏やかな雛人の寝顔だった。
カタリ・・・。
あの物音は雛人が目を覚まし、立てた音ではなかったのか・・・。
なら、あの物音は?
ふと、背中に視線を感じた。
そして、懐かしい・・・切ない・・・愛しい匂いを俺は嗅いだ。
俺はそろそろと寝返りを打って後ろを振り返り、ぼんやりと滲む二つの影を目の当たりにした。
「・・・おはようございます。要さん」
そう言ったその声は震えていて怒りと戸惑いと悲しみを含んでいた。
マジかよ・・・。
俺は外していた眼鏡を掛け、その滲んでいた二つの影を見つめ見た。
そこには血の色を失い、視線を忙しなく泳がし、涙を滲ませた咲良と友利の姿があった。
「・・・おはよう」
俺はそう答えてベッドから上体を起き上がらせようとした。
しかし、それを阻むモノがいた・・・。
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