猫とサクラ

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「先輩の本当の気持ちを知りたかっただけです。ただ、それだけ・・・」 咲良のその返答に俺は少し、ムッとさせられた。 ただ、それだけ? 「咲良。・・・俺を怒らせたいわけ?」 そう言った俺に咲良はぎょっとした顔を向けてきた。 「『先輩』って『田代先輩』のことですからね!?」 「そりゃ、わかってるよ」 んなこたぁわかってんだよ。 俺は心の内でそう毒吐いてその心の内で大きな溜め息も吐き出した。 咲良は俺のことを『先輩』とは言わない。 そして、それは咲良に限ったことではない。 遠野 春海(とおの はるみ)も最上 雛人(もがみ ひなと)も田代 友利(たしろ ともり)も俺のことは『要さん』と呼ぶ。 俺はなぜか後輩から『先輩』と呼ばれない。 別にいいけれど・・・。 「じゃあ何で怒るんですか!?」 そう訊ねてきた咲良の声は少し、裏返っていて面白かった。
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