畏れ多いひと

5/6
前へ
/36ページ
次へ
「あ……」  一部始終を途中から見ていたサンは胃がキリキリと痛むのを感じた。 「リチャード閣下は人格に難があられる」  ぼそりと呟いては、彼の耳に入ってないか心配になり彼の方を横目で盗み見た。  勘違いで命を奪える存在……それほどの魔術の力。それを振るったことで、間違えたごめんでは済まない結果が得られてしまう。  ヒグマがアリを踏んでも罪悪感を感じないように、帝国一の魔術師ともなれば力の次元が違うのだろう。  サンは身震いした。誰だって命は惜しい。サンは言うまでもなくアリ一匹に過ぎない。  先ほどその帝国一の魔術師を突き飛ばしたことを思い出し、サンは再びお腹が急降下するのを感じた。  厄介な人間に関わってしまった。それがサンの第一印象だった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加