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……。
……ン…………。
…………サン、しっかり……。
しきりに自分の肩をゆさぶる人の声が聞こえて、サンの意識は急降下した。
「なんだ? 俺は行軍中に寝ちまったのか?」
サンに意識を失う直前の記憶はない。
目の感覚を思い出すようにサンは二回目を強く瞑り、そしてゆっくりと目を開いた。
「サン、大丈夫か? 俺の声は聞こえるか?」
緑の長い髪、左右で色の異なる瞳、立てられた襟には「交差された杖に星三つ」の紋章……。
「ふぅぅわぁぁぁぁっ!」
サンが驚くのも無理はない。
その人相は、帝国一の魔術師、リチャード=ファクトその人のものだった。もちろん、二等兵ごときがまみえられるようなスケールの人間ではない。
サンは飛び上がった勢いで、正座していた。
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