海の街へ

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嵐は、あっという間に通り過ぎて行った。 曽根崎さんに服を乾かしてもらい、お礼を言って外に出ると、薄紫がかった雲が夜の訪れを告げていた。 嘘のように落ち着きを取り戻した空を眺めながら、自転車を置いた波止場まで歩く。 全く、おかしな体験だったな。 本当にあれは、人魚の仕業だったのだろうか。 ーまぁ何はともあれ、今は早く帰らなければ。 きっとカンカンになって、俺の帰りを待ち構えている2人がいるだろう。 ため息をつきつつ、自転車のカギを取り出そうとしてポケットをまさぐると、何か固いものが手に当たった。 ひやり、と背筋を冷たいものが流れた。 そういえば、あの時ー 恐る恐るそれを取り出してみると、 やはり、それはあの時浜辺で拾った緑色のかけらだった。 それは、鱗のようにも見えた。 fin
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