海の街へ

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「見たことない顔だから、初めまして、であってるよね?」 再度話しかけられて、ようやく意識を取り戻した。 危ない、うっかり見惚れていた。 「は、はい。今日、越してきたばっかりです。」 「なんていうの?」 「あ、えと、葉山湊です。」 そのうつくしい人は、みなと、と小さな声で俺の名前を繰り返した。 唐突に会話が途切れた。えっと、何かー。 「さっき見たことない顔って言ってたけど、いつもここにいるんですか?」 「うん。いつもここにいるの。 ここに来た人は、みんな知ってるよ。」 「ここで、いつもさっきの歌を?」 「そう。こうやって君みたいに聞きにきてくれる人が居るから。」 妖艶に微笑んだその人は、ゆっくりと俺に近づいてきた。
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