海の街へ

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膝のあたりまで海に浸かって、ようやく自分が海に入っていることに気づいた。 「あ…俺、今日、着替え持ってきてなくて…」 「大丈夫。怖くないから。」 いや、そういうことじゃなくて…と引き返そうとしたとき、自分の手が思いのほか強い力で握られていることに気づいた。 目前の完璧な微笑は崩れない。 そのことが、急に怖いと感じてしまった。 「ま、待って。ほんとにこれ以上は無理ですって」 「大丈夫よ。こっちにおいで。」 手に込められた力がさらに増した。 もはや、痛いと感じるほどに。 恐怖感がじわじわとつのってゆく。ーやばい、これ、ちょっとやばいんじゃないか。 「だ、誰か。」
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