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「おい!お前さん!なにをしとるんじゃ!
早よぉ上がってこんかい!!」
野太い男の人の叫び声で、俺ははっと正気に返った。
気が付けば、俺は腰のあたりまで海の中に浸かっていた。
そして何よりも驚いたのがーーーいつの間にか、土砂降りの大雨が降っていたことだった。
バケツをひっくり返したようなーというのは、まさしくこういう時の為にある表現に違いない。
波は荒々しい音を立て、竜のようにうねっていた。
「ぶはっ!」
勢いを増した波が、俺の全身に冷たい塩水を浴びせかけた。
慌てて波に背を向け、砂地へと戻ろうとすると、激しく沖へと引き返しだした波に、足を取られて顔面から砂地に突っ伏した。
「大丈夫かぁっ!」
激しく振り続ける雨は、容赦なく視界を遮り、声の主の姿はいまだ見えないままだった。」
背後から、轟音とも、雷鳴ともとれるような、波のうめき声が聞こえてきた。
早く、早く上がらないとー
顔面は砂だらけのまま、必死の思いで俺は砂地にたどり着いた。
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