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「昔からこの辺りには人魚伝説、っちゅうのがあってな。
人魚がその歌声で、寄りついてきた人をだまくらかして海の中に引きずり込むゆう話や。
嘘みたいな話やけど、昔は海に行ったっきり原因もわからずして、忽然とおらんくなったやつとかがおったらしいわ。
大半が嵐の日やったから、海難事故とも思われたらしいけど、それにしちゃあ、今まで死体が上がってきたことが一回もないっちゅうのまでは説明しきれんからなぁ。
最近はそういう話を聞かんけど、皆気持ち悪がって、天気の悪いときは沖さ寄り付かんのや。」
そういって曽根崎さんは、ココアをすすった。
俺は、体の血がすっと引いていくのを感じていた。
もし、あのまま曽根崎さんが呼び戻してくれていなかったらー
ぶるっと体が震えて、慌ててココアを飲み込むと、ジャリっとした気持ち悪い感覚が喉を通って行って、慌てて吐き出した。
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