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部屋に着くやいなや、運び終えたばかりの段ボールをまさぐり、去年買ったばかりのビーサンをなんとか発見した。
泳ぐにはまだちょっと早いだろうけど、足をつけるくらいならできるかもしれない。
母に見つからないようにこっそりと階段を降りる。
幸い母は、まだ大量の食器類と格闘していたため、こちらに気づくことはなかった。
ゆっくりと引き戸を開け、自転車置き場へと向かう。
鍵を外すと、ガション。と思いの外大きな音が響いたので、そっと家を振り返ると、二階の窓から渚が呆れたような顔をして見下ろしていた。
チクるんじゃねえぞ、の意を込めて口元に人差し指を寄せると、渚は窓から離れて行った。
あの野郎…チクるつもりか。
見つかる前に早く出よう。
ペダルに大きく体重をかける。
なにやら騒がしさが増したような家を背に、
見知らぬ街へと漕ぎ出した。
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