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浜辺にもやはり、人はいなかった。
砂浜には打ち寄せられた貝殻やゴミが散乱していた。
『遠泳禁止、死傷者多数!』と書かれたはげかかった看板が、砂浜に埋もれていた。
ズボズボと砂に足を取られながらも、打ち寄せる波の方へと進んでゆく。
鬱陶しくなって、ビーサンを脱ぐと、まだ温かさの残る砂が、足に吸い付いてきた。
波に近づき、そっと足を浸すと、その冷たさに驚いてひゃっと声をあげてしまった。
しかし、次第にその冷たさも心地よく感じらようになり、くるぶしの辺りまで浸かった。
ーなぎの奴、羨ましがるだろうな。
ほくそ笑みながら冷たさを味わっていると、打ち寄せられた波の中にキラリと光る何かを見つけた。
水の中に手を突っ込み、砂ごと掬い上げると、緑色の薄いかけらのようなものが混じっていた。
何だろう…貝殻のかけらか何かか?
それは光沢を帯びていて、角度を変えると様々な色に光った。
その時、微かに、しかし先程よりはっきりと、誰かの声がした。
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