海の街へ

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ー今の声は、女の、歌声? 周囲を見わたすと、少し離れた岩場に、ポツリとTシャツ姿の女の人が座っていて仰天してしまった。 人がいたなんて、全く気づかなかった。 その女の人は、こちらに背を向けて、俺を気に留める様子もなく、小さな声で歌い続けていた。 聴いたことのない歌だった。 ところどころ波の音に掻き消されながらも、しかし凛と透き通った、不思議なメロディー。 俺はいつの間にか、その歌声に聞き惚れていた。 だからその歌声が突然途切れ、女の人がこちらを振り返った時も、少し反応が遅れてしまった。
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