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「帰ろう」
と遥人は手を握ってくる。
草むらを踏んで歩きながら、遥人は言った。
「……お前は初めてだと言ったが、俺も初めてだ」
え? と那智は見上げる。
「自分から誰かにキスしたのは、お前が初めてだ」
ちょっと泣きそうになるような。
自分からじゃないのは、たくさんあるのかな、と悲しくなったような。
「専務、好きです」
と手を強く握ってしまう。
「……俺もかもしれないが。
今は言いたくない」
帰りの車の中で、もう一度だけキスをして。
あとは、いつものように過ごした。
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