上司の秘密

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 なんにも考えてなさそう。  それが遥人の自分に対する印象なのだ、とそのとき知った。  いや、まあ、確かに、あまり深く物事を考えないようにはしているのは確かだが。  それが考えたら、どうしようもなくなりそうな家庭環境のせいなのか。  生まれつきなのかは自分でもわからない。    そんなことを思い出していたら、今、目の前に居る遥人が、 「疑われてるのに、なにもしてないってのもな」 と言ってくる。 「いいじゃないですか、別に。  健全でしょ」 と言いながら、那智はドーナツの残りを割って口にした。 「もう出ませんか?  また、誰か来るかもしれませんから。  これ、専務の割り当てです」 と割った残りを渡すと、割り当てってなんだ、という顔をしながらも、食べてくれた。
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