夕日と共に、生命は満ちる。

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 その数は、映していたこの空をいとも簡単にかき混ぜてしまえる程。  しばらく空気が海のところどころで騒いだ後、砂浜に、生命の足跡がしっかりとついた。  二足歩行。人間のようだ。  その全身を包まれた姿は、白くも、頑丈な宇宙服にも見える。  そのため足跡は、人間の足よりも二回りほど大きい。  顔の部分は透明になって周りを見渡せるようになっている。  砂浜へ、一人、また一人、そして次第に数えきれなくなるような、全身を包む白いスーツを着た人間たちが大地に命を刻んでいく。  プシュッと、スーツの頭の部分からラムネの瓶の蓋が開くような爽快の音と共に、人間が顔を出す。  一人の、晴れやかな顔をした女性が海風に触れ、うっとりと目を細める。腰まで届く漆黒の髪が風に吹かれてやわらかくなびいていた。  「今日もまたいい月が出てるわね」  彼女は、共に歩いてきた男性へと声をかける。  「うん。今日も無事に、きみと月が見れて幸せだよ」  男性はスーツを脱いで、少し色の淡い皮膚であっても鍛えられた身体で女性と向き合い、微笑みを見せた。
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