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「っていうよりさー、俺は聡子の同居人の方が見たいわ」
「あー、千ちゃんね」
昨日、迎えの車の中で千次郎については簡単に話してある。
朝からも何回かメッセージが届いていて、羽田の到着時間に合わせて空港まで来ると言っていた。
「しかし、どうやって知り合うの? そんな男と」
「バー」
「へえ。ナンパ?」
「違うけど、いろいろあって居候させてあげてて」
「苦学生なん? ヒモ?」
「苦学生でもヒモでもない。ぼんぼんだよ。地元の中小企業の次男」
なんだそれ、と鶴千佳は苦笑して、
「で、付き合ってるってわけでもなくて? セフレ?」
「てゆーかヤッてないから」
「はぁ? なんなん、それ。そんなのありえんの?」
幸いなのか、当然なのか、一緒に生活していてもそんな雰囲気になったことはない。
入浴や寝起き、互いに礼節をわきまえているからか、そもそも千次郎も聡子にそんな役割は期待していないだろう。
万が一、そんな雰囲気になったとしても二十歳の子のお相手などできるわけがない。
千次郎が普段相手にしているような女子たちとはもう肌からして違う。
「あり得るの。ただの下宿生だよ」
一応、ギブ&テイクで成立しているのだが、神楽木への恋心まではここで言う必要もないだろう。
「超かっこいいの。イケメンは見てるだけで幸せな気分になるし、若返る気もするし」
「ババくさー」
「いろいろ都合がよくて私のところにいるみたいだから、そういうのが目的ではないと信じたいけど。まあ、そのうち浄水器くらいは買わされても仕方ないとは思ってるよ」
「マルチかよ」
「そんなの安いもんだわ。若いイケメンとの暮らしだよ。アラサーにはプライスレス」
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