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その間に少し落ち着こうと聡子が鞄からタオルハンカチを取り出していると、葉子が意外なことを言い出した。
「でね、マンタとバーベキューすることになったのー!」
「バーベキュー? マンタ? って鳳さん?」
「川北さんも俺のことはマンタって呼んで。いや、葉子ちゃんがすごくやりたいって言うからさ」
「アウトドアがしたいの! 山! 川! 太陽! 陽の光に当たりたい! 健全なことがしたーい!」
「健全って」
万太郎は苦笑とツッコミを混ぜて一度繰り返してから、
「誰も連れて行ってくれる人がいないって。川北さん、そうなの?」
「全然、いないよね!」
「え? ええっと……」
「いないじゃん! そんな健全な男、いないんだからー」
「葉子ってば、かなり飲んでるの?」
「そうでもないけどー 」と言いながらも、完全に絡み酒になっている。
「なんかひさひざにいい気分……聡子も来たし、ちょっと寝るぅ」
「えー? ちょっと、葉子ってば大丈夫?」
大丈夫大丈夫と言いながら、そのままカウンターに突っ伏してしまった。
珍しく酔っ払っているらしい葉子に代わって万太郎が、「アウトドアの話になって。そういうの、俺好きでさ」と説明してくれた。とにかく葉子は太陽の下での遊びがしたいのだそうだ。
「車で一時間半くらい行ったところに川もあっていい場所あるんだ。賢さんもアウトドア派だし、俺も結構好きだし、ここで知り合ったのも何かの縁だし、じゃあしようかってことになったんだ。川北さんもよく来てるんでしょ、アンバー」
「えっ、はい。まあ」
「俺もしょっちゅう来てるけど、会ったことないよね? あ、敬語いいから。同い年だし」
言われて、聡子は少し躊躇いながら、うん、と頷いた。
「私、いつも来る時間が早いから」
「あー、そうなんだ。俺はだいたい日付変わるころだからなー。今日はたまたま早いけど」
「私も。今日はたまたま遅い」
その答えに万太郎が笑ったので、聡子の肩からもふっと力が抜けた。
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