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スパニッシュオムレツとシチリア風ミートボールを運んできた神楽木に、聡子が来るまでの間に葉子が飲み過ぎていないかを確かめると、
「それでビールが四杯目」
「そうですか」
ということはいつもと変わらないか、 むしろ少ないくらいか。気持ちよさそうに寝ているので心配はないだろうが、言動からしてストレスが溜まっているのだろう。
「で、コウ、いついける?」
万太郎がグラスを置いて神楽木に尋ねた。聡子はまさかの展開に心臓がどくんと震える。
「僕はみんなに合わせられるよ」
「だったら、いつにしようか」
今度は聡子の方を向いてそう言った万太郎に、念のため尋ねてみる。
「あの、私も?」
「何言ってんの、もちろんじゃん。今のとこ、この四人と賢さんとで五人だけど、適当に呼んで人数増えるかもしんない。あ、川北さん人見知りする方?」
「人見知りはしないけど」
「葉子ちゃんは? 知らないやつらが多いの苦手とかある?」
聡子が否定すると、
「よかった。なんか、君らだったら大丈夫そうな気がして誘ったから」
「……うん?」
何が大丈夫なのかわからなかったが、万太郎が神楽木とバーベキューがどうこうと話し始めたので、聡子はそれに入ろうともせず、一人食事をすすめることにした。
聡子はもとから深追いはしない性格だ。
いや、そのように育てられた。なぜどうしてと一から十まで尋ねるのではなく、自分なりに考えて、つまりできる限りはまず推測して自分の中で解決するようにと。
聡子の口数が少ないのはそのせいだ。
聡子には一人姉がいて、その姉は考えるより先に行動するタイプのため、いつも父の不興を買っていた。
少ない情報に、時には間違った自己解決をすることもあるが、観察眼の鋭い聡子には、いますぐではなくてもそのうちに、その人の性格や言動に注意していればだいたいのことが理解できる。
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