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葉子を見送って部屋の掃除や洗濯をしていたところに、早速、万太郎から日程を問い合わせるメールが届いたので正直なところ驚いた。
聡子もすぐにメールで葉子を追いかけて、空いている日を尋ねる。
これもまた、いつもは返信に時間がかかる葉子からすぐに返事が来て、聡子は候補日をいくつか挙げた。すると、またその日のうちに万太郎から返ってきたメールで日取りが決まり、今度こそ本当にびっくりした。
しかも、さっそく来週末というスピード実現だった。
よほど暇人の集まりなのかと思ったが、万太郎に言わせると、こういうことは勢いで決めた方が、意外にも全員予定が合致するものらしい。「その場のノリで流れちゃうことが多いのに、すごい」と伝えたら、口だけと言われるのが嫌なのだと彼の律儀な一面を知った。
その後も、まるで仕事かと思う手際の良さですべてが段取りされていき、それに聡子がきっちり対応するものだから次の日までには大方のことが決まるというこれもまた異例の速さだった。
しかしそのどれも、独りよがりという決め方ではなかったから、普段から周りに重宝がられて調整役をこなしているのだろうことが想像できた。
手伝いや持ち物、役割の分担を申し出るも、あっさり「身一つで大丈夫」と言われてしまった。
もっとも専用の道具も持っていないし、車でもないので大して役に立たないことはわかっていたので食に関して言ってみたのだが、それはすべて神楽木が手配しているとのことだった。
飲食業なのだから当然といえば当然なのかもしれないが、申し訳ないやら楽しみやら、聡子の日々は全くもって落ち着かなかった。
打ち合わせという名目でいつもの週より一回だけ多くアンバーを訪れた。神楽木には「そしたら、むこうで手伝いを頼みます」と言われ、聡子の気合は十分だ。
エプロンも持参し、爪も短く切ってきた。
いかんせんアウトドアなので、服装やメイクに気合を入れるには限度があったが、悩みぬいたコーディネイトだ。特別な時のためのフェイスパックもした。
しかし、それを神楽木に悟られてはいけない。
「さー、聡子! 今日もバレない感じでガンガン攻めていこうぜ!」
「だからー、そんな攻めはしないけど……でも楽しみ」
先日アンバーで、聡子が揃うまでの間に交わされた話の内容を葉子から聞いたところによると、やはり神楽木は客からとても人気があるらしかった。
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