2.ファッションってオシャレじゃなくて気遣いなんだよ

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「コウさん目当ての女の客は大勢いるらしくってさ、だからすっごく警戒してるらしい」  たとえば今日みたいな店の外でのつきあいに、女の客を誘うことは普通ないそうだ。 「それなのに、なぜかマンタは私たちを誘ってくれたんだよね。まあ、私は確かに大丈夫だよ? けど、聡子は安全パイじゃないのにね。むしろビンゴなのに。下心の塊でなのにね!」  万太郎が言って聡子が聞き流した「大丈夫」の意味はそういうことだったらしい。 「聡子ってば、どんだけ好きオーラ消してんの? それとも、ダミーで彼氏いるとか言ってるの?」 「そんなの言ってないよ。でも、まあ……好意は意識して消してるつもり」 「なんで?」 「うーん。しいて言うなら、まさに警戒されないようにかな? でも正直、そこまで自分が気持ちを隠せていたことに驚いてる」  神楽木は、職業柄なのか何につけても敏い。そんな彼に警戒を解かせてしまうほど、聡子のポーカーフェイスは有効だということだ。 「まー、聡子もそういう処世術、長けてるじゃん? あ、それとも聡子ならウエルカムってことかもよ!?」 「それはないわー。私みたいな平凡な女。私、コウさんとどうにかなりたいわけでじゃないから、熱量が少なすぎてコウさんのフィルターに引っかからないのかもね」  アンバーに行けばときめきがもらえて、恋をしている自分が楽しい。聡子にはそれで十分なのだ。
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