2491人が本棚に入れています
本棚に追加
「コウさん目当ての女の客は大勢いるらしくってさ、だからすっごく警戒してるらしい」
たとえば今日みたいな店の外でのつきあいに、女の客を誘うことは普通ないそうだ。
「それなのに、なぜかマンタは私たちを誘ってくれたんだよね。まあ、私は確かに大丈夫だよ? けど、聡子は安全パイじゃないのにね。むしろビンゴなのに。下心の塊でなのにね!」
万太郎が言って聡子が聞き流した「大丈夫」の意味はそういうことだったらしい。
「聡子ってば、どんだけ好きオーラ消してんの? それとも、ダミーで彼氏いるとか言ってるの?」
「そんなの言ってないよ。でも、まあ……好意は意識して消してるつもり」
「なんで?」
「うーん。しいて言うなら、まさに警戒されないようにかな? でも正直、そこまで自分が気持ちを隠せていたことに驚いてる」
神楽木は、職業柄なのか何につけても敏い。そんな彼に警戒を解かせてしまうほど、聡子のポーカーフェイスは有効だということだ。
「まー、聡子もそういう処世術、長けてるじゃん? あ、それとも聡子ならウエルカムってことかもよ!?」
「それはないわー。私みたいな平凡な女。私、コウさんとどうにかなりたいわけでじゃないから、熱量が少なすぎてコウさんのフィルターに引っかからないのかもね」
アンバーに行けばときめきがもらえて、恋をしている自分が楽しい。聡子にはそれで十分なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!