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アンバーの前にはすでに車が寄せて停められていた。
そこだけ、時間に似合わない活動的な数人の姿が見える。
頭にタオルを巻いた賢が大きなクーラーボックスを黒のワンボックスカーのラゲッジスペースに積み込んでいた。
「おはようございます」
「おー! おはよーさん」
「あ、川北さん、甘利さん。おはよう」
店の中から両手で段ボール箱を抱えた神楽木が出てきた。
「早くからごくろうさま」
「コウさん、眠そうー」
葉子がからかうように笑う。
「だんだん、徹夜が厳しくなってきた」
「寝てないの?」
「仕込みしてたら朝だった」
神楽木は珍しく目をしょぼつかせて、しかもいつもの白いシャツではなく、今は黒のTシャツを着ている。
その新鮮な姿に聡子の胸がときめかないはずはない。
もう一台停まっているランドクルーザーでもバッグドアを開けた状態で荷物を整理している男女がこちらに向き直った。
「おーっす!」
万太郎と顔を合わせるのはあの夜ぶりだ。打ち合わせはすべて電話と文字のやりとりで済んだので、アンバーには行ったけれども、万太郎と機会を合わせる必要はなかった。
前回は落とされた照明の中だったが、明るい空の下で見ると抱いていた印象よりもさわやかな男性だった。
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