1.人生において出会いが運命的なものかなんて所詮後付け

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 聡子が訪れるのはオープンと同時刻の六時くらいで、ほとんどの場合が聡子の貸し切りだ。  アンバーが賑わうのは夜の九時、十時らしい。  つまり聡子の来店時間はまだ開店準備の延長にあって、賢が休みや遅番のシフトの時は神楽木が奥の厨房に姿を消すことも多いため、聡子は一人で時間をやり過ごさなければならない。  それはそれで、あまりおしゃべりな方ではない聡子にはちょうどいいのだが、反面、貴重な機会がもったいなくもある。  本当は毎日でも神楽木のところに顔を出したかったし、もっと酒を頼んで売り上げに貢献したいとも思うが、酒は得意ではないし、好きでもない。  なにより一人暮らしの身では、毎日飲みに出歩けるほど財布の余裕はなかった。  それでも他のことで節約し、聡子は週に一度か二度はアンバーに顔を出すように努力していた。  幸い、酒が楽しめなくても乾き物以外に手が込んだフードメニューがあって、それがとても美味しいのだ。  実際、それが目当てで通う客もあるというくらいだし、下心なく純粋に楽しみではある。
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