“決心”と“覚悟”

2/11

286人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
◇◇ 裏庭の花の植え付けを終わらせて、温室に戻って来たら、その奥の倉庫の裏に、人影があるのが見えた。 行ってみたら、膝抱えて座り込んでる咲月の姿。 「…珍しいじゃん。サボり?」 俺の問いかけに、ビクッとその身体を揺らした。 「涼太さん…」 無理矢理作った笑顔。頬には涙の筋が出来ている。 さっき出掛けた瑞稀もちょっと様子が変だったんだよな…。 二人の間で何かあったか? そんな事を考えながら隣に腰を下ろした。 「坂本さんに見つかったら大目玉じゃないの?」 「……。」 俯かせた咲月の睫毛が湿り気を帯びている。 「あのさ…瑞稀だけど。」 敢えてその名前を出したら、肩が少しピクリと揺れた。 やっぱ何かあったな、瑞稀と。 「圭介の話だと、今日、瑞稀はまた戻らないみたいだよね。」 「……はい。」 「戻んのは確か…明日の夕方だっけか。」 だいぶ冷え込みが厳しくなってきたここ最近、夕方のこの時間になると、話す度に吐いた息が白く形作る。それが消えゆくのをみつめてから立ち上がった。 「つーわけで、明日朝9時にここ、集合ね?」 「え?」 言った俺に、咲月は驚きの表情を向ける。 「俺とデート。咲月、休み貰って?」 「や、あ、あの…」 「…不満?あ、もしかして、瑞稀じゃなきゃ嫌とか。」 「え?!あ、あの…そう言う事ではなくて…。私、一昨日お休みを貰ったばかりで…。」 「じゃあ俺が圭介と坂本さんを口説けたらって事で。」 まあ…口説けんのは始めから決まってんだけどね。 さっき会った時、坂本さん、すげー心配してたから。 『咲月ちゃん、少し様子が変なのよ… 涼太君!ちゃんと元気づけてあげてよ!』 『何で俺なんですか…』 『そんなの、オバサンが話聞くより、イケメンが話聞いた方が良いに決まってるじゃない!』 豪快に笑ってた坂本さんを思い出したら何となく頬が緩む。 歴代のメイド、殆ど坂本さんの仕事ぶりについていけなくて、うまくいかずに辞めてってんのに。凄い気に入りようだもんな、咲月の事は。 大したもんだよ、咲月は。 .
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

286人が本棚に入れています
本棚に追加