“決心”と“覚悟”

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◇ 仕事を全て終えて自室へ戻った夜 スマホを確認したら『明日、休み、オッケーだってさ』と言うメッセージが涼太さんから送られて来ていた。 坂本さん…オッケーしてくれたんだ。 『楓ちゃん?ちゃんと食べなきゃダメよ!』 さっき交代でお夕飯に入った私の茶碗に山盛りのご飯をよそってくれた坂本さんを思い出す。 落ち込んでいるのに気が付いてた、確実に。 迷惑をかけちゃってるな…。 『寝坊すんなよ。』と言う涼太さんからのメッセージに返信をしてから天気を確認する。 明日は晴れか…瑞稀様は明日もお忙しいんだろうな…。 「もう来なくていい」と穏やかに言った瑞稀様を思い出し、また鼻の奥がツンと痛んだ。 …泣いたことは失礼であったと反省している。 けれど 『身体を壊したら元も子もないでしょ?』 あの優しさがどうしても苦しかった。 もちろん、ご主人様がメイドにそうやって声をかけて下さるなんて幸せな事で、まだこのお屋敷で働き始めて2ヶ月ちょっとであるにも関わらず、ご主人ではなくなった智樹さんに会いに行ってしまった事への罪悪感もあった。 けれど、そこに混ざって明らかに抱いた違う感情。 それは…メイドとしてはあるまじき別の感情だった。だからこそ、気持ちが高ぶり、涙がこぼれた。 熱めのシャワーを頭の上からかけたら、それがジンジンと頭から足の先まで染み渡る。全身の力が抜け、心地よい疲労感が込み上げた。 …このお屋敷に居たらきっと瑞稀様の事ばかり考えてしまうから、明日はいい気分転換になるかもしれない。明日だけ、皆さんの好意に少し甘えさせてもらおう。そしてまた、屋敷に戻ったら、ちゃんと『メイド』として仕事を全うしよう。 それが、ご主人様である瑞稀様に非礼をしてしまったメイドとしての私の誠意だと思うから。 .
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