突然の訪問者

22/26
前へ
/161ページ
次へ
. 瑞稀様と繋がった二度目の夜は、信じられない位幸せで温かくて、何度も、何度も涙がこぼれ落ちたけど。 それすら全部掬い取って「好きだよ」と微笑んでくれた瑞稀様。 …何だか夢の中でふわふわと浮かんでいる様な感覚だな。 シフトの関係でいつもより少しだけ遅い朝 洗濯物をカゴに入れて、干場へ向かう途中顔を上げたら、真っ青な冬の空が遠くまで続いてた。 フウと吐き出した息が白く舞い上がる。 頬を刺すような寒さも、その爽やかな気持ちと朝に取り込まれてなんだか幸せ。 やっぱり“あれ”はお渡ししよう…。日頃の感謝を込めて。 そう決心したところで、ポケットに入れているスマホが揺れた。 『おはよう。瑞稀様、もうすぐお出掛けになる時間だから、よろしくね』 …圭介さんからだ。 思わず頬が緩んだ。 どこから見つけて来たのだろうか、この瑞稀様そっくりのスタンプ。 パンパンと音をたてて、干した洗濯物は、何だか気持ちまでピシッとしてくれる気がして、今日も一日、頑張ろうと気合いが入る。 同時に、トクンと心音が心地良く跳ね出した。 ネクタイ…また結べるんだね。 洗濯物を全て干したら、一度、部屋に戻って椅子の上に置きっぱなしになってた紙袋を手にする。 本当は明日渡したかったけれど…今日明日はお忙しいとおっしゃっていたし。 勢いも大事だよね、こういう時は。 ギュッと胸元で抱きかかえた紙袋。 鼓動がドキドキと高鳴る中、足早に瑞稀様のお部屋へと向かった。 .
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

286人が本棚に入れています
本棚に追加