突然の訪問者

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◇ マコへ咲月の話をしようって思ってたせいか 寝た時間が遅かった割にパッと目覚めた24日の朝。 多分、朝っぱらから、マコが押し掛けて来るだろうと予想してたのに、一向に現れなくて。部屋を訪ねて行ったら、もぬけの殻だった。 荷物はそのままだし…もしかして涼太にでも会いに行ったのかな? 参ったな…今日は遅くなるかもしれないし。 まあ、でもゆっくり話したいし、また帰って来たら話すかな。 そう思って、クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントをそっとベッドの上に置いて部屋を出た。 . コンコン 朝飯を終えて、自室に戻ったタイミングで現れた昨日あげたシュシュを付けてる咲月。 …や、それはいいんだけどさ。 「おおおお、はよう、ご、ざいます。」 物凄い緊張ぶり。 昨日の今日だから?とも思ったけれど、気恥ずかしくて気まずいのとは少し違う感じがする。 「…どした?」 何か挙動不振でロボットみたいなんだけど。 あんまりにも面白くて、つい笑っちゃって、自分から近づいてって抱きしめた。 「…今更、気まずくなられても困るんですけど。」 そう言ったと同時に胸元から、ガサリって紙が擦れる音。 それに目線を向けたら 「あ、あの!えっと…違うんです!」 …パニクってる、勝手に。 「違うって、何が?」 「だから…その…ですね。」 抱えている紙袋を二つに折れ曲がる位ギュウッて抱き締めると、俯き様に、一度息を吐く咲月。 「こ、これ!ク、クリスマスプレゼント…です!あの…う、受け取っていただけませんでしょうか!」 「…俺に?」 「えっ?!は、はい…」 顔を真っ赤にして、手、震わせながら前に差し出してる、もはやシワシワの紙袋。 それで…『挙動不審のロボット』ね。 思わず頬が緩んだ。 そんなに緊張しなくてもさ。咲月からのプレゼントなんて受け取らないわけないのに。 躊躇なく紙袋をその手から抜き取る俺。 「…しわしわも良い所なんですけど。中の包み紙も含めて。」 「す、すみません…その…抱きかかえて来たものですから…。」 『抱きかかえて』…ね。 ニヤケる顔を必死で抑えて平静を装いながら包み紙を解いてく。 けれど、無駄な努力だった。 開けて中身みたら、顔の筋肉が更に緩む。 「…中身は無事みたいよ?」 そう言って咲月に差し出したそれ。 新しい、マフラー。 手編み…だよね、多分。 「巻いて?」 「え…あの…」 「巻いてくれないの?」 「えっと…あの…はい。」 ん?少しがっかりしてる? そう思っていたら、受け取って自分に巻こうとしている。 …何でだよ。 今の流れは、俺の首に巻く、でしょうが。 思わずその手首を掴んだ。 「咲月に巻いてどうすんだよ、俺に巻くんでしょ?俺のなんだけど、これ。」 「え?!あ、そ、そうですね…申し訳ありません…。」 慌てて俺の首に巻き始める咲月に苦笑い。 …俺は少し言葉足らずのところがあるんだろうな、きっと。 気をつけないといけないよな。特に咲月に感しては。 なるべく、誤解させたり、悲しませたりと言うのは、もうさせたくないし。 それにやっぱり、咲月だけは俺の気持ちをきちんと知っていて欲しいと思うかも。 綺麗に巻かれたマフラーがやけに首元を温めてくれて心地良い。 「これ…手編みだよね」 「前の物は私が使用していたのでだいぶ使用感がありましたので。 そのような物をつい、巻いてしまって申し訳ありませんでした。」 「…『つい』?」 「あっ!い、いえ…。」 口を閉ざそうとした咲月をまた腕の中に閉じ込めた。 「言えよ。『つい』ってどう言う事?」 俺の気持ちを知って欲しいよ思っているけどね? 当然、咲月の気持ちもちゃんと知っていたい、俺は。 「あ、あの…ですね。」 「うん。」 「あの時…その…寒そうで。し、失礼ながら、少しその…寂しそうに見えたと言いますか…心もとなく見えたといいますか…。」 咲月の辿々しい言葉に、鼓動が大きく跳ねた。 『寂しそう』…。 そうかもしれない。 あの時、会議の前だったってのもあって不安で。 圭介や涼太にはもちろんいつもみたいに気分を変えてもらって。 けれど、それだけじゃ震えが収まらなくて。 …そうか。 あの頃から、咲月は俺をきちんと見てくれていたんだ。 「…あの時は咲月が全然なびいてくれないから、悲しかったんだよ。」 「えっ?!」 「他に原因なんてあるわけないだろ、寂しそうに見えたなら。」 「も、申し訳…」 「謝ったら罰ゲーム…じゃなかった?」 その身体を抱き締め直して首筋に顔を埋めた。 「じゃあ…ずっと俺と居てもらおうかな。」 「はい。」 …即答だよ。 咲月の迷いの無い返事に少し笑ったら、息がくすぐったかったのか、少しピクリと身体が揺れてそれがやけに嬉しかった。 …やっぱりまだまだ素直に「ずっと一緒に居よう」とシンプルに伝えられないけれど。 まあ…気持ちを伝えるって面では、少しは進歩したかな、俺も。 .
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