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雛鳥は自分が何か分からないようです
「ピィ……」
うわぁ、綺麗……
現代じゃ絶対に見られない様な光景。
それが私の目の前に広がっていた。
「ピィヨ……」
……あれ?
私は、確かに自分の口で"綺麗"……と。
そう、呟いた筈なのに。
出てきた言葉は……
「ピィ、ヨ……」
雛鳥そのものの鳴き声だった。
私は自分が生まれたところから随分と遠くに来ていた。
自分が何なのかも分からない。
ココがどこなのかも分からない。
ただ、歩き続けるだけ、そんな感じだった。
でも、ひとつ違和感を覚えている。それは、木が大きすぎるのだ。
木は大きい。だが、これは流石に大き過ぎる。
早く、自分の姿を確認したいものである……
暫く歩き続けていると、湖が見えてきた。
湖……そうだ!この機会、自分の姿を確認できるチャンスだ!
そう思い、湖を覗き込む。そこには……
真っ白い鳥のヒナがいた……
「ピッ、ピィヨ?ピヨヨ?」
私は、思わず動揺する。
黄色い嘴に真っ白でフワッフワの雪のような色をした羽毛。
それは、まるで……
白鳥……
みたいだった。
いや、まだ雛鳥だから分からない。自分が白鳥であるという証拠だって無いんだし。
でも、アレはどうやっても白鳥にしか見えないんだが?
白鳥の雛鳥は、こんななのか?
それとも、別の雛鳥なのか?
どう考えても、答えは出てこなかった。
これは、転生……というものなのか?
私は、誰だ?名前は?年齢は?
考えど考えど出て来ない。
私は、誰なんだろう……?
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