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「フフフ、タイトルの『君』って…まさか私、とか言わないでよ?」
軽口で聞いたのに、それには返事をしなかった。
「タクティクスはね、読めば分かるけどキッチリ98まで進めてる。」
「私に?冗談。」
「だって君に小説の投稿をさせたのも、一つのプロセスだったんだよ?今や貴重なファンからのコメントに一喜一憂してるだろ?僕とは気づかずに。」
モヤモヤする。気づくも何も、彼との関係がダークでファンタジックで精緻な筋書き通り、だとでも言うの?
「君と付き合うのは7、本屋で待ち合わせするのは8、横書きを意識させたのは96、一つ一つが全部、最後のタクティクスを執行する為に綿密に設計した段取りだから。
アハハハハ」
大きな口に混乱する。腹の内を覗けるほど広げられたら、まるで高笑いする彼の話が本物で、私が生きていると信じてきた日々がフィクション、みたい。
どうしちゃったの?狂った人じゃあるまいし、
「嘘だよね?」
「嘘?作り話?夢?ハッ、そんなのどうでもいい。
ついに君は、膨大な書籍の中からちっぽけなたった一冊の僕の本を手に取ったんだ。これが重要。
話がウマすぎて笑いが止まらないよ。
日々タクティクスをクリアすることだけに神経すり減らしたからね。
友達も家族も全部捨てて。
それもこれも、この瞬間を待ってたんだ、長かったー。
ほらほら読んでごらんよ、素晴らしい。この奇跡的な偶然に見せかけて確実にここまで辿らせたのは、全部僕の操作なんだって。」
彼が私の抱えた本を指差した。ビクッとして反射的に半歩下がった。
「私を殺す気?だってそんな理由」
「言葉は魔法だ。あとは君が99章のページをめくり、動揺して本屋から出て行くのを見送るだけで、『了』。」
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